「候補者を選んだが、その基準が本当に正しいのか自信が持てない」「評価が属人的になっていて、公平性に欠ける気がする」——サクセッションプランを運用するうえで、こうした悩みを抱える人事担当者・経営者は少なくありません。
候補者の評価は、サクセッションプランの成否を左右する重要なプロセスです。評価基準があいまいなまま運用を続けると、「なぜあの人が選ばれたのか」という組織内の不信感につながるリスクがあります。
ここでは、評価の精度を高めるための主要フレームワークと、公平で納得感のある評価制度を運用するためのポイントを解説します。
候補者の評価を始める前に、まず「何を評価するのか」を明確にすることが不可欠です。評価基準がなければ、どれだけ優れたフレームワークを使っても結果にばらつきが生じます。
サクセッションプランの候補者評価では、今の業績・成果(パフォーマンス)と、将来の役割を担えるかどうかの可能性(ポテンシャル)を分けて評価することが基本です。現在の成績が高くても、経営幹部として必要なスキルや思考の伸びしろがない場合もあります。逆に、現時点では目立たなくても、育成次第で大きく成長できる候補者もいます。
評価基準は「誰にでも共通のもの」ではなく、後継者が担うポジションに応じて設計する必要があります。たとえば、事業部長候補に求める能力と、グローバル事業を統括するポジションの候補者に求める能力は異なります。ポジションごとに必要なスキル・経験・価値観を言語化することが、評価精度を高める第一歩です。
評価基準が定まったら、それを客観的に測るための手法を選びます。ここでは代表的なフレームワークを紹介します。
縦軸に「将来のポテンシャル」、横軸に「現在のパフォーマンス」を置き、候補者を9つのボックスに分類するフレームワークです。組織全体の人材分布を視覚的に把握できるため、限られたリソースをどの候補者の育成に集中すべきかの判断に役立ちます。多くの企業が導入しており、サクセッションプランにおける基本ツールとして広く活用されています。
| 現在のパフォーマンス (低) |
現在のパフォーマンス (中) |
現在のパフォーマンス (高) |
|
|---|---|---|---|
| 将来のポテンシャル (高) |
ポテンシャル人材 (育成枠) |
成長期待人材 (次期幹部候補) |
スター人材 (次期後継者 最有力) |
| 将来のポテンシャル (中) |
課題あり人材 (配置転換・再教育) |
コア人材 (組織の中核) |
優秀なプレイヤー (部門の牽引役) |
| 将来のポテンシャル (低) |
要改善人材 (再指導対象) |
安定人材 (着実な貢献者) |
熟練スペシャリスト (現在の役割で活躍) |
上司だけでなく、同僚・部下・関連部署など複数の視点から候補者を評価する手法です。上司からの評価だけでは見えにくい「リーダーシップの発揮状況」「周囲への影響力」「コミュニケーションスタイル」などを把握するのに適しています。ただし、回答者の主観が入りやすいため、質問設計と結果の解釈には注意が必要です。
外部の専門機関が提供するアセスメントツールを活用することで、個人の思考特性・意思決定スタイル・ストレス耐性などを客観的なデータとして把握できます。社内の評価だけでは測りにくい「内面的な資質」を補完するうえで有効です。活用する際は、ツールの特性と目的が自社の育成方針に合っているかを確認することを推奨します。
「高い成果を出す人材に共通する行動特性(コンピテンシー)」をあらかじめ定義し、候補者の行動がそれに合致しているかを評価する手法です。評価者による主観的なばらつきを抑え、行動事実に基づいた評価ができる点が特徴です。
フレームワークを導入しても、運用の仕方によっては評価の質が低下することがあります。よくある落とし穴を把握しておくことが重要です。
評価者が特定の上司1名に偏ると、その人の好みや主観が結果に影響します。複数の評価者による評価を組み合わせることで、属人化のリスクを下げることができます。
「今期の業績が良い=幹部候補として優秀」という判断は、必ずしも正確ではありません。現在のポジションで成果を出すことと、より上位のポジションで成果を出せることは別の能力です。パフォーマンスとポテンシャルを切り分けて評価する視点を持つことが重要です。
評価を実施しても、その結果が育成計画や処遇に反映されなければ、候補者のモチベーション低下や制度への不信感につながる恐れがあります。評価結果を育成アクションに必ず連動させる仕組みを作ることが、制度を機能させるうえで欠かせません。
評価の精度を高めるだけでなく、評価される側が「公平に見てもらえた」と感じられる運用がサクセッションプランの継続性を支えます。
何を基準に評価されているかを候補者本人が知らない状態では、評価結果への納得感が得られにくくなります。評価項目や基準をあらかじめ候補者と共有することで、自己成長への意識も高まります。
評価結果を一方的に通知するだけでなく、「なぜその評価になったのか」「何を伸ばせばよいのか」を具体的に伝えるフィードバック面談を実施することが重要です。評価は「判定」ではなく「育成のための情報」として機能させることで、候補者の成長が加速が期待できます。
事業環境や組織の方向性が変われば、経営幹部に求める能力も変化します。評価基準は一度作ったら終わりではなく、1〜2年に一度は見直す機会を設けることが、制度の陳腐化を防ぐポイントです。
サクセッションプランにおける候補者評価は、「何を評価するか」の基準設計と、「どう評価するか」の手法選択の両輪で考えることが重要です。
候補者評価の設計や運用に課題を感じている場合は、アセスメントや育成プログラムを専門とする研修会社や経営塾への相談も選択肢の一つです。
経営幹部育成は、誰を育てるかによって選ぶべきプログラムが異なります。
ここでは、事業部長候補・現地法人の代表候補・次期後継者候補の3タイプに分けて、相性のよい研修プログラムを紹介します。
【事業部長候補】向け
経営変革を担う人材の育成なら

実在企業の課題をもとに考え抜く演習や、異業種の受講者との議論を通じて、経営判断力・戦略思考・構想力を磨けるプログラムです。部門最適ではなく、全社視点で考えられる人材を育てたい企業に向いています。
【現地法人の代表候補】向け
グローバルリーダー育成なら

異文化理解や現地適応力に加え、実務を想定したトレーニングを通じて、グローバルな経営視点と現地スタッフとの協働力を身につけられるプログラムです。赴任前後の育成を強化したい企業に向いています。
【次期後継者候補】向け
事業承継のためのインプットなら

階層別テストやケース演習を通じて、後継者候補に必要な意思決定力・リーダーシップ・経営知識を整理して強化できるプログラムです。事業承継に向けて、必要な知識を計画的に補いたい企業に向いています。