新任役員は、役割の重さが増す一方で「経営目線の判断」や「社内外を動かす対話」が急に求められます。本記事では、新任役員・幹部候補の育成に取り組んだ事例を4つ紹介し、設計のヒントを整理します。
同社で取締役(総務部長・営業本部部長)を務める水上敏郎氏は、昇格をきっかけに「役員として自分のレベルを上げたい」という課題感を持ったといいます。新任役員は担当領域の延長だけでは立ち行かず、社内の複数部門を束ねながら、社外の目線も踏まえて判断する場面が増えます。一方で、現場では経験則で動けてしまうからこそ、論理性や根拠の積み上げが後回しになりやすい点が壁になりがちです。
取り組みの中心は「Real Time Online Case Study(RTOCS)」です。毎週提示されるテーマに対し「自分がその経営者ならどうするか」を考えて投稿し、最後に解説が提示される形式で、思考と検証のサイクルを回します。水上氏は途中で投稿が厳しい時期もあったとしつつ、「全部やる」と宣言した以上やり切ると決め、継続的に取り組みました。
初期は他の受講者の投稿レベルに圧倒され、痛いところを突かれるコメントもあったと語られています。さらに1週目は課題が英語で投稿できず、気持ちが折れかけた場面もありました。それでも2週目以降は、討論に参加するディスカッション・パートナー(コーチ役)が「この点はどうか」と丁寧に指摘し、論拠不足を補う形で学習を前進させたといいます。週末の時間を確保し、調べて書くことを習慣化した点が、継続を支えました。
水上氏は、直感で動きがちな自分に対して社長から論理性不足を指摘されることがあったものの、RTOCSを通じて十分なファクトを積み上げて考える習慣がついたと述べています。結果として、会社運営や他社との提携交渉などでファクトベースの思考が役立ち、視点が経営者目線に上がったことで、役員として判断していく自信にもつながりました。
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同社では、社長交代を見据えた後継者育成において、個人の選抜だけでなく、組織としてサクセッションをどう運用するかが論点になりました。後継者候補を早期に指名すると、候補に入らなかった人材の納得感や定着の問題が生じやすく、社内の空気が揺らぐリスクもあります。新任役員・次期幹部を育てる際には、「誰が社長になるか」だけでなく「誰が支えるか」まで含めた設計が欠かせません。
記事内では、後継者候補16名を抜擢し育成する「社長研修」を実施したことが紹介されています。狙いは、個々の能力開発にとどまらず、次期経営を担う層に共通の視点と覚悟をつくることです。とくに、社長の意思決定の重みを理解し、経営判断を自分ごととして引き受ける準備を促す点が特徴です。
転機として挙げられているのが「自己発見・探索プログラム」です。参加者が自分史や喜怒哀楽、やりがいの源泉などを掘り下げ、互いの価値観や意思決定の癖を理解し合うことで、自己開示と相互理解が一気に進んだとされています。さらに「戦略推進マネジメント・社史プログラム」では、社長の過去の意思決定を追体験し、重大局面での判断を自分ならどうするかを議論することで、経営の責任を体感する設計になっていました。
研修を通じて、単なる候補者の集合から「次期経営幹部チーム」へと関係性が変化し、誰が社長になっても他のメンバーが支える強固な土台ができたと語られています。1人を選ぶことに焦点を当て過ぎる場合に比べ、周辺人材の離職リスクを高めにくい設計であり、サクセッションを「個人戦」ではなく「チーム戦」として運用する発想が、育成の成果として示されています。
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同社では、変化のスピードが上がる環境下で、事業への精通に加えてプロの経営視点を持つ人材育成の必要性が高まったと整理されています。従来の延長線上の経験だけでは、複雑な意思決定や組織横断の調整に対応しづらく、新任役員・幹部候補には「会社の舵取り」を担う視点が求められます。また、部長層が会社や自身のビジョンを考え、自分の言葉で語る機会が少なかった点も課題として挙げられていました。
2019年度から実施している選抜部長層研修では、経営視点の獲得と、ビジョンを語れる状態をゴールに設定しています。研修の最終アウトプットとして、一人ひとりが未来に向けた経営ビジョンや使命感を発表する「ビジョンスピーチ」を行う点が特徴です。アウトプットが明確だと、学びが「受講して終わり」になりにくく、役員登用後も必要となる説明責任の訓練につながります。
インタビューでは、ビジョンスピーチの内容づくりが難関だった一方、講師やコンサルタントがこまめに助言し、プレ発表の場で受講者に寄り添ったフィードバックを重ねたことが語られています。受講者の理解度や弱点を踏まえてチューニングが行われたことで、研修運営が安定し、改善を重ねながら継続できた点もポイントです。新任役員育成では、共通カリキュラムに加え、個別の言語化支援が効果を左右します。
成果として、研修参加後に役職が上がった受講者が多く、ビジョンを自分の言葉で語る姿が随所で見られるようになったとまとめられています。また、研修を続ける中で将来の経営層のプール人材が不足していることが浮き彫りになり、全社経営を俯瞰できる幹部候補層のサクセッションプラン確立や早期育成の検討がスタートしました。研修が「育成」と同時に、人材ポートフォリオを点検する機会になった事例です。
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同社では、人材開発の取り組みを強化するために「人材開発センター」を新設し、新入社員からマネジメント層まで研修を整備してきた一方で、管理職より上の層を対象とする体系的な育成は手薄だったといいます。収益基盤強化に向けた事業転換が求められる中、次の経営を担う幹部を継続的に育てる必要があり、「将来の経営層になる準備」として経営幹部育成研修を始めた流れが紹介されています。
研修ではケースメソッドを取り入れ、事前に課題図書とケースを配布し、当日は討議中心で進行する構成です。受講者は設問への回答を準備して臨み、講師のリードのもと議論を深めます。さらに事後課題として、ケースから学んだ事項をまとめるだけでなく、自社でどう活用するかまで考えて提出する設計になっていました。学んだ知識を「自社の意思決定」に戻すところまで含めている点が、新任役員育成にも応用しやすい形です。
プログラムは全6回で、リーダーシップ(4月)、経営戦略(5月)、マーケティング(6月)、会計(7月)、財務(9月上旬)、組織・人材(9月下旬)と、経営の主要テーマを段階的に学びます。例えば会計回では財務諸表の分析を通じて企業の体質や成長性、課題を読み解き、財務回ではM&A判断やリスクコントロール、成長戦略の評価など、経営幹部に求められる財務思考に触れます。テーマを横断して学ぶことで、個別最適ではなく全体最適の視点が育ちやすくなります。
研修では「このケースなら自分はどう考え、どう意思決定するか」を問い続け、グループ討議で相互に意見交換することで、新たな気づきが得られたと述べられています。また、研修開始前の社長講話に加え、最終回後には研修の学びを基に「社長との対話」に臨み、会社のあるべき姿と現状の乖離、その要因を取り除く施策案を全社視点でまとめて議論する機会が設けられました。新任役員にとって、学びを経営トップとの対話に接続する場があることは、行動変容を後押しします。
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4つの事例に共通するのは、新任役員に必要な力を「知識」ではなく意思決定と対話の実践として鍛えている点です。オンラインのケーススタディで根拠を積み上げる習慣をつくる、後継者育成をチーム設計として捉える、ビジョンを自分の言葉で語る場を用意する、経営テーマを横断して学びトップ対話につなげる。こうした仕掛けを組み合わせると、役員就任後の実務に学びが戻りやすくなります。
また、本サイトは経営幹部の育成に特化した情報をまとめています。
「事業部長候補向け」「現地法人の代表候補向け」「次期後継者候補向け」という対象者別のおすすめの研修プログラム提供会社も紹介していますので、比較・検討の材料としてご活用ください。
経営幹部育成は、誰を育てるかによって選ぶべきプログラムが異なります。
ここでは、事業部長候補・現地法人の代表候補・次期後継者候補の3タイプに分けて、相性のよい研修プログラムを紹介します。
【事業部長候補】向け
経営変革を担う人材の育成なら

実在企業の課題をもとに考え抜く演習や、異業種の受講者との議論を通じて、経営判断力・戦略思考・構想力を磨けるプログラムです。部門最適ではなく、全社視点で考えられる人材を育てたい企業に向いています。
【現地法人の代表候補】向け
グローバルリーダー育成なら

異文化理解や現地適応力に加え、実務を想定したトレーニングを通じて、グローバルな経営視点と現地スタッフとの協働力を身につけられるプログラムです。赴任前後の育成を強化したい企業に向いています。
【次期後継者候補】向け
事業承継のためのインプットなら

階層別テストやケース演習を通じて、後継者候補に必要な意思決定力・リーダーシップ・経営知識を整理して強化できるプログラムです。事業承継に向けて、必要な知識を計画的に補いたい企業に向いています。