企業において「経営層が一枚岩である」ということは、社長や役員が共通の理念やパーパスに基づいて、「全社最適」の視点で意思決定や方針の共有を行っている、という状態を指しています。このような状態であれば、スピーディーな決断と実行力を生み出し、高い組織力の発揮が可能となるため、企業にとってメリットがあるといえます。こちらの記事では、経営層の一枚岩を目指す取り組みを行った企業の事例を紹介していきます。
東京電力の子会社であり、木や建築、電気、機械関係の設計・解析・技術コンサルティングを行う東電設計の事例です。同社は東日本大震災が発生した翌年の2012年、東京電力の経営状況の影響を受けて社員の給料大幅カットや離職者の増加、社員の士気が低下していたことに加え、売上の大半を占めていた東京電力からの仕事が長期にわたり激減することが確実視されるなど、さまざまな課題を抱えている状況でした。
上記の課題に対し、東電設計では「設備の、ゆりかごから墓場まで、一貫したサービスで、顧客により添い共に歩むホームドクターとしてトップコンサルを目指す」という目標を立て、2013年末までに外販率を50%にするという定量的目標も定めています。
この目標を達成するには、東電設計の総合力を活かすため各部門の連携が必要となります。しかし当時の同社は強力な縦割り文化が浸透していたことも課題の一つとなりました。
縦割り文化という状況を改善するためにも、本社移転を機にワンフロアで執務可能なビルに移り、部門間の協働を促進するなど、組織の再構築のためさまざまな取り組みを行っています。さらに意識面を統一するために、まずは役員を一枚岩にすることを目指して役員の個別インタビューや顧客・取引先からの声の収集、社員対象のアンケートなどを実施し、材料を共有した上で泊まりがけの合宿を実施しました。
経営に関し本音で対話するとともに、今後の会社の方向性についての基本案を全員で作成。その後は部門を横断して部長以下への働きかけを行い、全社員参加の討議も行っています。
合宿や社員との対話で上がってきた意見には迅速に対応する体制となり、例えば大型の高速プリンターの購入、中途採用の拡大など、社員から上がってきた本質的な課題にはすぐに着手するようになりました。このような施策に取り組むことによって、2013年には目標通り外販率51%を達成しています。
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日本電気株式会社(NEC)は、コンピュータやソフトウェア開発、システムインテグレーション(SIer)事業を軸として、生体認証や5Gインフラなど幅広く手がけています。同社は2000年代に入って以降グローバルにおける競争が激化したことから、それまでのPCや半導体などのプロダクトにおける影響力が限定的となっていました。
上記のような背景から、同社はプロダクト型事業からソリューション型事業にシフトを行い、全社的な事業ポートフォリ変革に取り組みました。
ビジネスモデルの転換に向け、2012年頃に当時の経営陣が合宿まで行いながら議論を行うことにより同社の存在意義を見つめ直しました。その結果、創造していくべき新しい価値が見えてきました。さらに、2018年ごろには「実行力の改革」を行っていますが、この点が現在のNECの人的資本経営の出発点となっています。
NECでは2018年にエンゲージメントスコアを取り始めていますが、当時は日本企業の平均よりもかなり低い19%という結果になっていました。この点を踏まえてさまざまな施策に取り組み、2014年には営業利益が3倍、エンゲージメントスコアは2倍以上に到達しています。そして、外部からの評価の証でもある株価も3倍以上に上昇しています。
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大手メーカーC社では、新規事業立ち上げを行うにあたり、「イノベーション創発の場」を生み出すためのチーム作りを行うことを求められていました。そのためには、経営トップの危機感がCxO陣に共有されていないという課題意識が強かったことから、まずは経営チームの一枚岩化を目指したコーチングが行われました。
しかし経営チーム内でのカルチャーのせめぎ合いがある、部門関連携がうまくいかないといった状況があり、現場での実行力が上がらないという状況に陥っていました。
上記の課題を解決するため、まずは経営陣にて共通の認識を持った上で、それぞれのCxOが管掌部門のミッションをクリアにし、そこから横の連携を生み出して現場におけるアクションの加速を目指すことになりました。
アクションの加速を行うため、事前に個別のインタビューを実施したのちに経営チーム内でそれぞれの部門のミッションを共有し、質問やフィードバックを重ねながら各部門のミッションについての理解を深めました。その後経営チームにおけるリーダーシップ開発を行い、最後にチーム進化のための合意形成と自走するための仕組みづくりを行うという流れで進められました。
上記のような取り組みを行った結果、トップの危機感が共有されたことによって、互いに安心感を持ったチームになれたことに加え、プロジェクトの途中から部門間連携による具体的な動きが生まれ、成果を出すことに繋がりました。
さらに、COOやCFOが横連携をリードするアクションが生まれたことから、これまでトップと各CxOの間のみで行っていた1on1が、CxO間での相互1on1に発展するといったように、経営チーム内での関係性やコミュニケーションのプロセスにも変化が生まれています。
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ある企業の社長が複数の息子への事業承継を検討していた中で、どのようなタイミングで承継を行うべきか、という出口戦略を検討していました。この場合、将来的に問題が発生しにくい株式の配分としなければ、仲違いが発生することによって経営判断が困難な状況になる可能性も考えられますし、経営に関して必要なスキルを持っていない人が経営判断を誤ってしまうといったリスクを防ぎたいと考えていました。また、株式贈与の際に生じる贈与税に関しても、資金が流出してしまうリスクへの対応が求められていました。
上記の課題に対応するための方法としてまず挙げられたのが、事業承継税制の活用です。税制を活用することにより、一部の株式については贈与税の納税をやむなしとしましたが、概ねの株式において税制優遇を受けられる見込みとなりました。
さらに後継者教育を実施。後継者となる息子との面談を行うことにより、どの業務の適性があるか、さらに短所を補うか、長所のみに焦点を当てるかなど、育成方針と期間について検討されています。
社長の考えとしては、長男を社長とし、次男は専務として後継者になって欲しいと考えていました。2人ともすでに営業部門の取締役として活躍していたことから、営業手法、リーダーシップ、胆力などは持ち合わせていたものの、財務スキルのほか、コンセプチュアルスキルや遂行・実行力にも不足があることがわかりました。この点から、経営目線のスキルであるコンセプチュアルスキルと遂行・実行力を伸ばす、という方針を打ち立てています。
社長の意向により5年以外の承継を目標としていることから、その目標に向けた育成・承継計画を立てています。まだ取り組み始めたばかりであることから、今後は定期的にヒアリングを重ね、後継者のスキルの状態を把握。その上で次の育成方針を打ち出す、という方法を繰り返していくことになっています。
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こちらの記事では、経営層が一枚岩になるための取り組みを行ってきた事例について紹介してきました。経営層が一枚岩になることによって、意思決定のスピードアップや実行力の向上など、さまざまなメリットが期待できます。
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「経営陣・役員が一枚岩である」という状態は、単純に全員が同調し、同じ意見を持っていることを意味しているのではありません。多様な価値観や専門性を持った役員同士が、本音で異なる意見や異論をぶつけ合った上で、最終的に会社が目指す方法性や経営判断に深く合意できている状態を「一枚岩」といいます。
意見の対立を恐れずに建設的な議論を尽くして決定された内容については、「自分ごと」として推進していく姿勢が求められます。異なる意見だからといって単に妥協するのではなく、対話を通じ質の高い意思決定を行うことが、真の一枚岩の基本であるといえます。
経営陣が一枚岩になっている組織は、「会社のビジョンや中長期的なゴールについて、役員全員が高いレベルで共感し、目線が合っている」という共通点があります。また役員同士の間にも深い信頼があり、それぞれの部門を超えて全社最適の視点で行動ができるといった点も共通しています。
一枚岩の組織は、単なる「仲良し集団」や異論を許さない「同調圧力」とは異なります。「仲良し集団」の場合には、関係性の悪化を恐れるあまり、厳しい指摘や本音での議論を避けてしまうことから、結果的に意思決定の質低下につながっていきます。また「同調圧力」が強い組織の場合には、トップの意見に従うだけで、役員それぞれの当事者意識が欠如することになります。
真の一枚岩とは、お互いへの信頼やリスペクトを前提としつつ、必要な時には激しく意見を交わし、目標に向かうための推進力と連帯感を生み出している状態を指します。
経営陣・役員が一枚岩になるのが難しい理由のひとつとして、それぞれが背負っている役割や部門の責任の違いが挙げられます。例えば営業部門は売り上げの拡大を最優先とする、管理部門はコストの削減やリスク管理を重視するといったように、それぞれが持っているミッションを達成するために衝突が起こりがちです。
このように、全社的な視点より、自部門の利益や目標の達成を優先することによって、結果的に経営陣全体の足並みが揃わないという事態につながります。
役員間に心理的安全性がないなど、本音で議論するための関係性が構築されていない点も、一枚岩化を阻む要因であるといえます。例として、過去の経緯や派閥、パワーバランスなどから、役員同士が牽制し合う、表面的なやり取りに終始してしまうといった状況も考えられます。
「意見を出したとしても否定されるのではないか」「今後の立場が悪くなってしまうのでは」といった恐れから、重要な局面でも当たり障りのない意見しか出ず、経営課題の根本的な解決に向けた本質的な対話が生まれにくい状態になってしまいます。
役員同士の対話時間が不足している点も、一枚岩になれない理由のひとつです。役員は日常業務や目先のトラブル対応に忙殺されているため、経営陣同士でじっくりと対話を行える時間が不足しています。そして、定期的に役員会や経営会議が開催されていても、それぞれの部門からの業績報告や承認事項の処理に時間を費やしてしまい、今後の戦略や組織のあり方などについて議論を行う余裕がないこともあります。このように、時間的なゆとりがないことからそれぞれの考え方や価値観について深く理解する機会を持てない状態であるといえます。
社長と役員、あるいは役員同士での「目線」が揃っていないことも、一枚岩化を阻む要因です。社長は会社全体での変革や中長期的なビジョンなど、高い視点で物事を考えているのに対して、役員が現場の実務や短期的な数値目標といったレベルで物事を捉えているのであれば、両者の目線を合わせられません。このように、経営層・役員において目線が揃わないのであれば、当然一枚岩になることが難しくなります。
経営陣・役員が一枚岩になると、意思決定のスピードが飛躍的に向上することが大きなメリットです。前提となる目的や判断基準が役員間で共有されているため、重要な経営課題に対してもスピーディーに合意形成を得られます。
さらに経営陣と役員が同じ方向を向いていることから、現場に対して発信されるメッセージも一貫したものとなります。このことにより現場でも混乱が発生せず、社員が目標に向かって迷わずに行動できる環境を作り出せます。
役員がそれぞれの部門の利害を超え、全社最適の視点を持てるようになった場合、部門間の対立が減少します。経営陣がそれぞれの立場を理解して協力し合う姿勢を見せられれば、それが現場にも波及していき、結果として部門の壁を超えた連携がスムーズに行われるようになります。そうなると、全社的なプロジェクトや新たな戦略への推進力が高まり、組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。
変化が激しい現代の中で企業が生き残っていくには、組織改革や事業モデルの転換が必要なこともあります。このような変革を行うにあたっては、経営陣の一枚岩化が非常に重要なポイントです。
経営陣が「このチームでやり抜く」という意識を共有できていれば、困難な課題が出てきたとしても逃げずに向き合うことができます。そして経営陣が結束していることで社員にも安心感を与えられ、組織の変革に対するモチベーションと実行力を底上げする原動力となります。
一枚岩化を進めるにあたっての第一歩は、経営の根幹となる目的やビジョン、意思決定のための判断基準を言語化し、しっかりと共有していくことが重要です。会社が将来的にどこに向かうのかといった点を共通認識として持つことで、もし議論が迷走した場合にも立ち返るべき軸が生まれます。
単なる報告の場になっている、役員会や経営会議のあり方を見直すことも必要です。具体的には、それぞれの部門の状況報告などはできるだけ短い時間で行い、残りの時間を経営戦略や組織の課題などに関する対話や意思決定に充てられるように、会議を設計し直します。役員それぞれが自由に意見を交わせる場を設けることによって、より質の高い経営判断につなげられる環境を作り出せるといえます。
日常の業務から離れ、非日常の空間で議論を行うオフサイトミーティングや経営合宿は、役員間の本音を引き出す有効な手段であるといえます。数時間から数日間にわたって、会社の未来やお互いの考えについて語り合うことによって、会議室ではなかなかできない深い会話を交わせます。
このような場では、短期的な業績について会話するのではなく、中長期的なビジョンや組織風土など本質的なテーマを設定するのが効果的であり、心理的安全性を確保しながら本音で話す経験が一枚岩化を加速させます。
役員同士がお互いの意見を尊重し合うには、業務上でのスキル・経歴のほか、それぞれが持つ価値観や物事の捉え方の背景についての共有が求められます。価値観や背景を共有する時間を設けることによって、相手への共感や信頼感を育むことができ、「なぜその意見に至ったのか」という部分を理解できるようになります。この点から、意見が対立した場合にも感情的に衝突することを避け、建設的な議論につなげられる関係性の構築を行えます。
経営層や社内の人間だけでは、これまでの関係性やパワーバランスが壁となってしまい、本音での対話を引き出すことが難しいケースもあります。このような場合には、チームコーチングや外部支援を活用するのが効果的です。中立的な第三者が介入することによって堂々巡りの議論となることを防げます。
一枚岩化を目指す中では、対立を恐れるあまり「表面的に足並みを合わせる」という状況になってしまうケースもあります。これは、一枚岩になることを「波風を立てない」ことであると勘違いしているため。本音を飲み込んで無理に同調するといったやり方は、真の課題を隠してしまうため、逆に組織の硬直化につながります。そして、経営層が建前のみで合意した戦略は、現場にとっては「やらされている」という感覚となってしまいます。この点から、「一枚岩」とはどんな状況なのかを正しく認識し、真の合意形成を目指すことが大切です。
社長や一部の役員の意見が強すぎる場合、他の役員からの異論や意見が封じ込まれてしまう可能性があります。このような状況になると、さまざまな視点からの意見が欠如してしまいますので、経営上のリスクを見落とす、イノベーションの芽が摘まれてしまうといった状況になり、意思決定の質が低下することになります。
一枚岩の組織を構築するには、心理的に安全な環境を経営トップ自らが作っていくことも必要です。
例え経営合宿やオフサイトミーティングを通じて役員間の絆が深まったとしても、日常業務に戻ると元の状態に戻ってしまうケースも少なくないといえます。一枚岩はすぐに成し遂げられるものではなく、日々のコミュニケーションや意思決定のプロセスにおいて、行動変容を定着させていくことが大切です。合宿後のフォローアップや定期的なエグゼクティブ・コーチングの導入など対話の質を維持し、チームを進化させ続けるための継続的な仕組みの設計が求められます。
経営幹部育成は、誰を育てるかによって選ぶべきプログラムが異なります。
ここでは、事業部長候補・現地法人の代表候補・次期後継者候補の3タイプに分けて、相性のよい研修プログラムを紹介します。
【事業部長候補】向け
経営変革を担う人材の育成なら

実在企業の課題をもとに考え抜く演習や、異業種の受講者との議論を通じて、経営判断力・戦略思考・構想力を磨けるプログラムです。部門最適ではなく、全社視点で考えられる人材を育てたい企業に向いています。
【現地法人の代表候補】向け
グローバルリーダー育成なら

異文化理解や現地適応力に加え、実務を想定したトレーニングを通じて、グローバルな経営視点と現地スタッフとの協働力を身につけられるプログラムです。赴任前後の育成を強化したい企業に向いています。
【次期後継者候補】向け
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階層別テストやケース演習を通じて、後継者候補に必要な意思決定力・リーダーシップ・経営知識を整理して強化できるプログラムです。事業承継に向けて、必要な知識を計画的に補いたい企業に向いています。