持続可能な社会の実現が企業経営に不可欠となった今、経営層に求められるのは単なる収益向上ではなく、社会課題を自らの経営テーマとしてとらえ、長期的視点で意思決定できる力です。サステナビリティという正解のないテーマに対し、どのように向き合い、経営戦略に組み込むかが問われています。
本記事では、サステナビリティ経営を推進する役員育成プログラムを導入した企業の事例を掲載しています。サステナビリティ経営を担う次世代リーダーを育成したい企業のトップ層・人材開発担当者は、自社に合った導入プランを構築するための材料としてご活用ください。
東京海上日動火災保険は、グローバル展開している保険グループ「東京海上ホールディングス」の中核企業です。グローバル展開に取り組むのはもちろん、マザーマーケットである日本での地方創生にも注力しています。
地方創生を推進する経営リーダーを育成しようにも、それを支える準リーダー層(課長層一歩手前)が育っていない課題がありました。そこで、準リーダー層の成長機会を増やす育成プログラムを実施することになったのです。
2つのゴールが設定された「地方創生プロジェクトを通じた人材育成プログラム」を行いました。1つ目のゴールは、地方創生をテーマとする新規事業を創出すること。2つ目のゴールは越境の苦労を乗り越えることです。On the Project Training(OnPT)という手法を活用し、リアルな社会課題に対してソリューションを創出する経験を積みました。
また、他企業のメンバーと一緒に取り組む「越境学習」の場を設けて、価値観の揺さぶり・固定観念の打破を促進しています。
プログラムのカリキュラムは、外部パートナー(グロービス)や人事部門と協議を重ねながら構築されました。
現地視察や企業間の意見交換を通じながら、人事担当者も企画から運営まで参画。「派遣して終わり」ではない設計を担保しました。コロナ禍ではオンライン対応を行いつつ、内省を促す問いかけや細やかなケアを通じて、学習効果を効率化しています。
4期目を迎え、成果は着実に現れています(2021年度時点)。受講者には、自己認識の深化や発言の変化が見られたほか、上司からの評価や評価制度による定量的変化も確認されました。
当初は選抜したメンバーを対象とするプログラムでしたが、公募制にしようという意見も挙がっています。自分で問いを立て、自分で決める自律型社員の育成を今後さらに進めていく予定です。
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島田組は、埋蔵文化財発掘調査や土木工事を中心として、地域社会の発展に貢献している企業です。選ばれる会社になるには、環境・社会・経済の三側面に配慮し、持続的成長と社会価値の両立を目指す必要があると考えていました。
事業承継も予定していたため、専務取締役はミッション・ビジョン・パーパスを再策定。サステナビリティ経営を推進するのに必要な人材像を言語化し、採用・育成研修・サイトのリニューアルなどを実施しました。
実施されたのは、SDGs・ESG経営に関する研修です。経営支援部を担う2名の中核人材を対象として、外部CHROの伴走のもと企画・実施されました。研修では、SDGsとESGの本質的な関係性や、サステナビリティ経営を具体的に社内に落とし込む方法について学習。
後半には、ESG経営の専門家である白井旬氏が監修した「SDGs・ESG経営カード」を活用し、体験的に理解を深める構成がとられました。
この研修は、CI制作やコーポレートサイトの刷新、採用・育成体制の強化など、一連の組織変革プロセスが進んだタイミングで実施されました。新たに採用した人材のオンボーディングと同時に、変革の担い手として期待されるメンバーへの視座の引き上げを目的として、導入のタイミングが綿密に設計されていたのです。
また、単発では終わらせず、他社を巻き込んだ公開勉強会への展開も視野に入れることで、社内外の共感形成も狙いました。
人的資本経営とESGの取り組みを先行することで、地域社会におけるポジションの確立に成功した事例です。島田組主催で公開勉強会の企画も始動し、地域全体への波及効果も期待されています。
研修を受講した2名は、SDGs・ESGに対する抽象的な理解から脱却。「なぜ取り組むのか」「どう実行するのか」が明確になり、高い当事者意識を持ってサステナビリティ経営を推進する準備が整いました。
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三井物産は、単なる商取引にとどまらず、顧客の課題解決を起点に、事業・市場を創る「課題解決型企業」として進化を続けています。
三井物産グループの事業活動を通じ、地球規模の課題解決に挑戦しており、サステナビリティ経営に対する意識も高いのが特徴です。グローバルなサステナビリティ課題に対し、全社的な方針・体制整備を推進してきました。
しかし、全社員がサステナビリティ経営を「自分ごと化」するのは難しいという課題がありました。任意型研修の限界もあり、全社的にサステナビリティを意識させるには、新たなアプローチが必要とされていたのです。
サステナビリティ経営推進部は、クロスフィールズと連携し、VR/360度映像を活用したプログラムを導入。原料のサプライチェーンをテーマとして、原料がどこの誰から、どう運ばれてきて、どのように使われているのか疑似体験することで、社会課題の自分ごと化を促進するプログラムです。
国内外の単体社員を中心とする4,000名以上が必修となりました。映像を視聴しながら、グループで気づきを共有し合う設計で、所要時間は1時間。ファシリテーター不要という運用のしやすさも受講を後押ししました。
プログラムの定着を図るため、イントラネットでの特設サイト設置や社内告知を強化。制作段階では、撮影地のグアテマラにも同行し、現場のリアリティを徹底的に映像に反映しました。英語対応も含め、細部まで作り込まれた設計が、映像体験を通じた「共感」を生み出しています。
受講後のアンケートでは、「部署に関係なく全社で取り組むべきだと気づいた」「異なる視点の共有で理解が深まった」といった声が多数寄せられました。
また、受講を契機とした部門間連携や自発的な相談行動も生まれ、組織全体にサステナビリティの意識が浸透しています。
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サステナビリティは特定部門の取り組みではなく、経営全体で向き合うべき共通課題です。次世代の経営層には、環境・社会との共存を前提とした新たな意思決定力が求められます。
本記事で紹介した事例は、それぞれ異なる業種や組織フェーズにありながらも、共通して「サステナビリティ経営を中核に据えた人材育成」に取り組んでいることが分かりました。
具体的には、視座の引き上げや社会課題との接続を促す設計、越境や対話を通じた内省・行動変容を重視した構成などを重視すると良いでしょう。本記事の事例が、サステナビリティ経営の推進人材を育成する一助となれば幸いです。
また、本サイトは経営幹部の育成に特化した情報をまとめています。
「事業部長候補向け」「現地法人の代表候補向け」「次期後継者候補向け」という対象者別のおすすめの研修プログラム提供会社も紹介していますので、比較・検討の材料としてご活用ください。
経営幹部に必要な能力が身につく
育成研修プログラム提供会社
おすすめ3選
「サステナビリティ人材」とは、自社の利益を追求するだけではなく、環境や社会の持続可能性も合わせて考え・行動できる人材を指しています。つまり、企業や組織が持続可能な社会を実現減することに向けて、環境や社会、ガバナンス(ESG)に関連する課題に対応し、中長期的な価値の創出に貢献します。現代社会においては、脱炭素戦略の企画やサプライチェーン上の人権対応など、企業の経営のさまざまな場面において、その役割が求められています。
サステナビリティ経営の推進においては、経営層・管理職・現場といったそれぞれの階層において役割が異なります。まず経営層ではESGに関連する課題を経営戦略の中核に据えて、非財務資本への投資や事業ポートフォリオの変革に取り組んでいくといったように、重要な意思決定を行う役割が求められることになります。管理職は、抽象的な戦略を自部門における現場の業務プロセスに落とし込んでいく、という役割を担っています。
そして現場で働く従業員には、日々の業務の中で環境負荷の低減、人権配慮といった点を実践し、現場を基点として課題の解決につながるアイデアを生み出す実行力が求められます。
自社にとって必要な人材要件を定義する場合には、自社が抱える重要課題とビジネスモデルを紐づけて考える、という視点が欠かせません。例として、製造業の場合にはサプライチェーン全体の脱炭素化について推進できる人材、サービス業であれば人材資源を最大化できる人材が重要であるといえます。世界的な社会課題に対応できる汎用的なスキルが求められるほか、自社の戦略を実現するための具体的な要件を明確にすることが、人材の育成において重要なポイントといえます。
人材育成を単なる研修で終わらせないためにも、経営戦略と人材戦略を連動させることが大切です。「社会に対しどのような価値を創出するのか」という部分を出発点として、この目標を実現するために必要となる人材要件について検討し、育成方法を定めていきます。
サステナビリティは非常に幅広い概念であることから、定着のためには座学のみでは不十分であるといえます。そのため研修や実務、対話を組み合わせることがポイントとなってきます。
具体的には、学んだ知識を自部門の課題解決に当てはめて考えていくワークショップや、新規事業を立案するといった実務経験、経営陣との対話といった方法が考えられます。このように、実践と振り返りを繰り返すことによって、それぞれの社員の中で学びが定着していきます。
育成人材がこれから先活躍し続けるには、評価・報酬など人事制度全体の見直しまで行うことも必要になってきます。自社が求めているサステナビリティ要件に基づく採用基準の刷新、ESG目標の達成度について従業員の評価に組み込んでいくインセンティブ設計などが有効とされています。
また、現在の人材スキルと将来求められるスキルのギャップを可視化する「人材ポートフォリオ」の構築を行い、戦略的に人材を配置する、継続的なリスキングを実行していくといった仕組みを整えていきます。
一般社員向けの研修は、SDGsの基礎に関する理解やコンプライアンスの遵守といった点を主な目的としています。対して役員研修は、企業の持続的な成長と競争力の強化を支えるという役割を持つ、経営幹部を育成するという目的で行われます。例えば、研修により役員が持つ役割と目標を明確にすることによって、それぞれが自分の責任を自覚し、主体的に行動ができるようになるために行われます。さらに、役員自身のモチベーションを高めるとともに、組織全体の方向性を揃えるためにも役員研修が必要であるといえます。
役員研修のテーマは非常に多岐にわたります。その中で、経営判断につながる部分は役員研修ではじめに押さえておくべきテーマであるといえます。例えば、企業の持続可能性を高める上で欠かせない視点であり、企業価値評価の新たな尺度として注目を集めているESG経営の考え方や、円滑に事業を運営するために必要となる人権問題への配慮、世界の気候変動に関すること、人的資本経営についてといったテーマが挙げられます。
研修の中では、外部環境の変化について一般論を学ぶといった内容に加えて、その内容を「自社にどのように適用するか」に惹きつけて議論を行っていくことが重要です。例えば、気候変動リスクが自社の事業にどのような財務的な影響を与えるのかをシミュレーションするといった方法が考えられます。このように、抽象論で終わらせずに、実践劇で経営に直結するアウトプットを導き出すような研修の構成とすることが求められます。
研修の成果を測るにあたり、「受講者数」「実施時間」といった実行指標(アウトプット/KPI)のみで考えるのではなく、研修を通じてどのような行動変容や事業へのインパクトが生み出されたか、という成果指標(=アウトカム)で測ることが大切です。研修後に提案されたサステナビリティに関連した新規事業の数、業務プロセスを改善した件数といったように、戦略に直結する具体的なアウトカム指標についてあらかじめ設計を行い、投資対効果についてシビアに確認する姿勢が需要です。
役員研修の成果については、ペーパーテストで測れる「知識の理解度」ではなく、実際の「意思決定」や「組織変化」に現れてきます。そのため、取締役会や経営会議にて、ESGの観点を取り入れた議論を行う頻度が増加した、また環境リスクを理由として既存事業の撤退基準が厳格に適用されるようになったかなど、経営方針に変化が生じているか、という点についてモニタリングを行います。また従業員エンゲージメント調査を行い、スコアに変化が出たかといった点も、効果測定の指標として活用できます。
研修後の最終的な成果評価は、学んだ内容が実際のビジネスモデルに生かされているかといったところまで十分に確認する必要があります。研修内容が事業に実際にどう活かされているのかを確認し、継続的な学習の仕組みを整えることによって、長期的な社内浸透に繋げることができます。
経営幹部育成は、誰を育てるかによって選ぶべきプログラムが異なります。
ここでは、事業部長候補・現地法人の代表候補・次期後継者候補の3タイプに分けて、相性のよい研修プログラムを紹介します。
【事業部長候補】向け
経営変革を担う人材の育成なら

実在企業の課題をもとに考え抜く演習や、異業種の受講者との議論を通じて、経営判断力・戦略思考・構想力を磨けるプログラムです。部門最適ではなく、全社視点で考えられる人材を育てたい企業に向いています。
【現地法人の代表候補】向け
グローバルリーダー育成なら

異文化理解や現地適応力に加え、実務を想定したトレーニングを通じて、グローバルな経営視点と現地スタッフとの協働力を身につけられるプログラムです。赴任前後の育成を強化したい企業に向いています。
【次期後継者候補】向け
事業承継のためのインプットなら

階層別テストやケース演習を通じて、後継者候補に必要な意思決定力・リーダーシップ・経営知識を整理して強化できるプログラムです。事業承継に向けて、必要な知識を計画的に補いたい企業に向いています。